今日は、この間のテストの返却日・・・!!一応、私なりに頑張ったつもりだ。でも、結果は見るまでわからない。そう思いながら、少しそわそわしていた。
クラスのみんなも同じような感じで。返されてからも、落胆や喜びで浮き足立った感じだった。
しかも、いつも名簿順だと面白くないからと、先生が今日はランダムに返却している。だから、余計に緊張感がアップしていた。


「はい、次。じゃあ・・・。」

「はい!」


今、緊張したところで、テストの結果が変わるわけじゃないけれど。それでも、少しドキドキしながら、自分の答案用紙に書かれている数字を見た。
・・・・・・・・・・・・・・・94点!!これは、なかなかの・・・いや、ちゃんと高得点だよね!!うん、頑張った甲斐があった!!

その後、いくつかの教科が返されたけど・・・。そのどれもが結構良い点数だった。
私にしては頑張ったよね!なんて、機嫌よくお昼を食べていると、珍しく日吉がこっちに来てくれた。
わわ、今日はすごく運の良い日かもしれない・・・!!


。」

「な、なに?」


慣れない出来事に焦り、完全に返事が吃ってしまった。
でも!!仕方がないじゃない・・・!!今日は朝から良い天気で・・・。この後は練習に行くものだと思ってたんだもん。それなのに、どうして私の所に・・・。


「今日、やたらと機嫌が良さそうだな。何かあったのか?」


・・・・・・・・・もしかして。いや、もしかしなくても!それを聞くためだけに、私のところに来てくれたの・・・?!そんな日吉の言動が、何よりも私の機嫌の良さの原因になるとは知らないであろう日吉に、私はさっきまでのちっぽけな原因を話した。


「うん。ちょっと、今日のテストの点数が良かったから。」

「それは良かったな。」

「まぁね。でも、すごく良いってわけじゃないよ?」

「何点ぐらいだったんだ?」

「えぇっとね・・・。」


私は、お昼までに返された教科の点数を日吉に教えた。それを聞いて、日吉は何も言わず、ただ驚いているようだった。私がここまで出来る子だとは思ってなかったでしょ?と得意気になった私は、調子に乗ってしまった。・・・・・・・・・うん、本当に調子に乗った・・・。


「頑張ったでしょ、私!」

「・・・・・・・・・あぁ・・・そうだな。」

「そういえば、日吉はどうだった?」

「俺、か・・・?」

「うん。私も教えたんだから、日吉も教えてくれたっていいでしょ?」

「・・・構わないが・・・・・・。」

「じゃあ、教えて?」


言いにくそうに答えるから、てっきり日吉の方が悪い点数なのかと思ったら・・・・・・・・・。その逆。むしろ真逆の点数だった・・・・・・。


「・・・・・・・・・全部、私より高い・・・。」

「・・・悪い。」

「謝らないでよ!余計、虚しい・・・。」

「・・・・・・だが、お前だって頑張ったんだろ?」

「でも・・・悔しい・・・。よし・・・。日吉!午後の科目で勝負!!」

「・・・いいだろう。・・・後悔、するなよ?」

「望むところ!」

「じゃ、俺は練習行ってくるから。」

「わかった。行ってらっしゃい。」

「楽しみにしてるぜ・・・?」


日吉は最後、ニヤリとしながら去って行った。・・・・・・日吉め・・・!!さっきまでは、私に申し訳なさそうな顔してたくせに・・・!!今となっては、それすらも腹立たしく思えてきた。
絶対、勝ってやるんだからー!!!!

そして、迎えた残りの授業。休み時間には、毎回日吉の席へ向かった。
果たして・・・・・・・・・結果は・・・。


。部活、行くぞ。」

「・・・・・・・・・は〜い・・・。」

「・・・なんだ、その気の抜けた返事は。」

「だって・・・結局、全敗したもん・・・。」


そう、結果は私の惨敗・・・。あんなに張り切ったのに・・・。


「今回は、だろ。次、頑張ればいいだけの話だ。・・・まぁ、俺だって、そう簡単には抜かせないがな。」


また嫌味っぽく日吉が言う。・・・やっぱり、悔しい。
テストの結果は、人と比べるものじゃないとは思う。普段なら。・・・だけど、相手が日吉じゃ、話は別だ。


「ズルイ、日吉・・・。」

「何が、だ。」

「だって、日吉は勉強もできて、テニスも上手い。他のスポーツだってできるし・・・、運動神経がいい。・・・・・・私、勝てる気がしない・・・。」

「運動面で、男に勝とうとする方が無理だろう?」


違う。負けるのが嫌なんじゃない。・・・ただ、少しでも日吉に追いつきたいんだよ。・・・・・・好きだから。


「それ以外でも勝ててないの。」

「例えば・・・?」

「日吉は見た目だってカッコイイし、人気あるし。」

「はぁ?何言って・・・!」

「言い合いだって、勝てる気がしないもん。」

「・・・・・・・・・そんなことで勝ったって、何の意味もないだろ。」


日吉が呆れたようにため息を吐く。・・・だけど、どんなことでも日吉との差を感じたくないんだよ。好きな人を遠くに感じたくないの。


「だって・・・。」


それをどう説明すればいいかもわからず、私はただ項垂れた。また日吉がため息を吐いたのが聞こえる。
・・・ごめん、日吉。別に困らすつもりはなかったんだよ。でも、ちょっと不安になっただけ。
そう思いながら、もう話を変えようと、私は顔を上げた。そのとき、日吉が先に口を開いた。


「俺だって、お前に勝てないことぐらいある。」

「・・・・・・そうなの・・・?」

「あぁ。」


私を励まそうとしてくれたのだろうか。でも、それにしては、日吉の言い方が上手すぎる。本当に、私に勝てないのが残念だと思っているみたい。・・・・・・本当に?


「本当に?」

「こんなことで嘘を吐いても仕方ないだろ。」


思わず出てしまった疑問に、日吉はあっさりと答えた。・・・ってことは、やっぱり本当なのか。
そうなると、今度はその中身が気になるわけで。私は嬉しそうに聞いた。


「じゃあさ、じゃあさ!例えば、どういうとこ??」


さっきまでの落ち込みが嘘のように明るくなった私を見て、日吉も残念そうな表情から、打って変わってニヤリとした笑みを浮かべた。


「誰がそんなこと教えてやるか。」


・・・・・・やられた!!これが日吉だ・・・!!!たしかに優しいとこもあるけど、基本はこうやって私をからかうんだから・・・!!だから、私はやっぱり日吉には勝てないのよ!!
と、半ば怒りながら、私は例の言葉を言い放った。


「絶対、日吉に下剋上してやる・・・!!」

「・・・・・・ま、精々頑張るんだな。」


楽しそうに言う日吉を見て、私は本気で下剋上を誓った。日吉が私に勝てないと思っていること、絶対に解き明かしてみせるんだからね!!!!













下剋上、いい言葉です(笑)。私も、どんどん使っていきたいと思います!(←)・・・と言いつつ、意外(?)と使うところって無いんですけどね(笑)。

ところで。この話に出てくるテストの点数のことですが・・・。深くは考えないでいいと思います(笑)。正直、日吉くんが94点以上を取るなんて、高すぎるような、それが当然のような・・・・・・・。
なので、とりあえず、テストで勝負して、負けたんだなぁ〜ってことをわかっていただければ、と思いますっ!(汗)

('09/11/27)